東文彦と三島由紀夫のこと

2023-03-10 00:21:00

白い花

 文彦というと、どうも白い花が連想されるようです。

 文彦に小説の指導をしてくれていた恩師、室生犀星は、文彦が亡くなった約1年後に追悼文を書いています。

 その最後には、文彦に捧げられた追悼の俳句、つまり「悼句」が付されています。

 「白菊や誰がくちびるになぞらへし」というものです。

 文彦は小説で魅力的な少女を書くのが得意でしたが、その少女達は、誰がモデルなんだろうか、というような意味だと思われます。

 白菊のふっくらした感じと、少女達の唇の感じが似ています。

 また、白菊の清らかなイメージは、文彦という人物の清らかな感じに通じています。

 そして、やはり亡くなってしまった文彦に捧げられた白菊が連想されます。

 さすが犀星だな、と思われる俳句ですね。

 犀星は生きている文彦に会ったことはなく、亡くなった顔を初めて見て、美しい青年だと思ったと、追悼文に書かれてあります。

 

 友人、三島由紀夫もまた、文彦を白い花になぞらえています。

 文彦が亡くなった当時18歳だった三島は、文彦の葬儀で、友人代表として弔辞を読みます。

 その読み上げられた言葉の中で、文彦を白梅にたとえます。

 文彦の清らかさについて、「雪の内なる白梅のおもかげもありけるものを」と述べているのです。

 

 親しい人達の多くが、文彦を白い花に結びつけていることからは、文彦の個性が感じられます。