

東文彦と三島由紀夫のこと
2023-10-12 11:23:00
小説「中世」第1回に感じたこと
三島がもうすぐ招集されて戦地に行かなくてはならない、という切羽詰まった状況で書いた小説です。
ですから、小説全体に緊迫した感じがあります。
第一回の現代語訳をまとめてみて、感じたことがあります。
日本の中世を舞台にして、足利将軍である義政と義尚の親子を描いています。
室町時代の戦乱の状況が、第二次世界大戦最中の三島の当時の社会状況にぴったり合っていますね。
もうすぐ戦地に赴こうとしている義尚の言葉に、死を覚悟しているのだけれど、親しい人には大丈夫だから、戻ってくるから、という感じで会話しているところなど、当時の三島の心境と同じだったのだろうな、と感じます。
また、能を上演中に鼓を破ってしまった演奏者に対して、義政が非常に怒って御手討ちにしてしまう、つまり直接斬り殺してしまう場面は、軍国主義の昭和初期にあって、暴力的に𠮟りつけるような兵士や上官を連想しました。
「中世」とは、戦時中の生活のいろいろな要素が色濃く投影されて書かれているのだな、と実感しました。

